金沢の公園で雪だるまが死んだ
金沢、という言葉があなたに何を呼びさますか、僕はぜんぜん知らない
公園、という言葉があなたに何を呼びさますか、僕はぜんぜん知らない
雪だるま、という言葉があなたに何を呼びさますか、僕はぜんぜん知らない
死、という言葉があなたに何を呼びさますか、僕はぜんぜん知らない
そんな僕があなたに、一行だけの手紙を送る
「金沢の公園で雪だるまが死んだ」
あなたは知らないだろうけど、僕は金沢で生まれた
あなたは知らないだろうけど、僕は10歳で金沢から引っ越した
あなたは知らないだろうけど、僕は金沢という街をいまでも懐かしく思っている
あなたが何も知らないということを、僕は知っている
「金沢の公園で雪だるまが死んだ」
金沢は、もしかするとあなたにとっても思い出の場所だったかもしれない
公園は、もしかするとあなたにちょっとしたケガの記憶を呼び起こしたかもしれない
雪だるまは、あなたの唯一の友達だったかもしれない
死は、あなたの人生にすでに大きな穴を開けていたのかもしれない
「金沢の公園で雪だるまが死んだ」
僕は金沢の公園にこれといった思い出があるわけではない
どこかの公園で雪だるまにまつわるエピソードがあるわけでもない
不意のなつかしさに引っ張られて一行の手紙をあなたに書いた
ただそれだけのことだ
「金沢の公園で雪だるまが死んだ」
その手紙が、あなたを殺してしまった
ぼくがいまでも理解していない刃が、あなたを貫いてしまった
あなたがどこで死んだのか、僕は知らない
あなたがちゃんと弔ってもらえたのかも、僕は知らない
「金沢の公園で雪だるまが死んだ」
何も知らない僕は、あなたを殺してしまった手紙で墓を建てた
あなたのことを何も知らない僕は、墓には誰の名前も書かなかった